金曜日, 11月 15, 2024
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学校法人穴吹学園|アフリカからの留学生がインターンシップとして多岐にわたる専門学校の設備を見学実習

学校法人穴吹学園(香川県高松市:理事長 穴吹忠嗣)は、国際協力機構の事業であるABEイニシアチブのインターンシップとしてアフリカ出身の留学生を受け入れ、2日間の実習プログラムを提供した。

学校法人穴吹学園(香川県高松市錦町1-22-23:理事長 穴吹忠嗣)は、2014年から続く独立行政法人 国際協力機構(JICA)の事業であるABEイニシアチブ(アフリカの若者のための産業人材育成:African Business Education Initiative for Youth)のインターンシップとして5人のアフリカ出身の留学生を受け入れ、2日間にわたる専門学校での実習プログラムを提供した。留学生の出身国は、ナイジェリア3人、ケニア、ガーナが各1人。

ABEイニシアチブについて

https://www.jica.go.jp/africahiroba/business/detail/03/index.html

JICA-ABEイニシアティブで専門学校の学びの特長である自動車整備実習を体験するアフリカからの留学生

留学生のインターンシップが行われたのは8月29日、30日。香川県での受け入れとして穴吹興産グループのプログラムの一環として8月26日から9月6日までの12日間の期間のうち2日間にわたり、日本の専門技術教育機関の視察として穴吹学園が運営する専門学校と専門職短期大学を訪れた。

1日目に訪問した専門学校は、穴吹リハビリテーションカレッジ、穴吹工科カレッジ、穴吹ビューティカレッジ、穴吹デザインカレッジ、穴吹医療大学校の5校。留学生らは、始めに日本の高等教育機関としての専門学校の位置づけと社会の需要について説明を受けた。2050年には世界の人口の4分の1がアフリカにいると予測されているが、現在でも人口2億人を超えるナイジェリアをはじめとして多くの国で人口増加の問題を抱えている。またそれに付随した、都市問題、環境・衛生、経済格差、地域格差など様々な課題を抱えている。

留学生の中でも、低所得層への専門技術教育の習得は若年層への就労の課題としてとらえ、日本の専門学校の技能習得の仕組みや設備や安全性に大いに関心を寄せていた。説明を受けた後、各分野を順に実体験を交えながら学ぶ内容の理解を深めた。リハビリの理学療法では自身の手首のエコー画像を見て神経と筋肉の動きを確認。また作業療法分野では麻痺や障害を持つ人の手や指の動かし方などを手裏剣の折り紙をしながら学んだ。

病気やケガで障害を持った人の治療や社会復帰など、医療と福祉の両面を日本の高齢社会に対応する考え方はどの国でも抱えていく問題となる。アフリカ諸国にとっては高齢化はだいぶ先のことになるかもしれないが、日本の教育現場を視察しながら社会のあり方を考察した。

お昼休み。一行は香川県のソウルフード讃岐うどんを学校近くのうどん店で食事。セルフサービススタイルの店舗は香川県では当たり前だが、大学の学食のようなスタイルは留学生にとっては新鮮な感覚のようで、できたてのうどんを自分で湯掻くなどして一味違った食事スタイルを楽しんだ。


食事後は自動車整備の実習としてタイヤの脱着やエンジンの分解に挑戦。普段は日本の大学院で法律や経営について学んでいる彼らだが、安全で効率よく作業ができる作業場で自動車整備の専用の工具を使いながら、自らの手を動かすことで日本の専門学生がどのようにして技術を身につけていくか学んだ。

実は国内で自動車整備を学ぶ学生は留学生が多い。この学校では圧倒的に外国人が多く、ベトナム、ネパール、スリランカ、インドネシアなど出身国は多彩だ。このインターンシッププログラムが縁で入学したアフリカ出身の卒業生もいる。彼らは世界最高水準の整備技術を身に付け、日本での専門職としての就労はもちろん、一定期間後帰国し、自国で自動車整備や修理・販売の職を夢見る学生もいる。


自動車産業においては、特にナイジェリアへの輸入車は新車ではなく中古車が90%にものぼる。しかし日本のような車検などの制度が整っておらず、事故や故障が多い。日本では整備士制度が国家資格となっており整備の精度や常態の維持などが故障や事故の諸問題を未然に防ぐことに大きく寄与している。

その後学校を移動して、デザインやビューティ分野の学校を視察。美容やメイク、エステを学ぶ設備を見学。ここで留学生たちはビューティの学校ならではのサプライズを体験することになる。美容やブライダル分野を学ぶ学生は着物の着付けを学んでおり、学生の中には着付け教室を開ける師範レベルの実力をつける者もいる。留学生らは用意された着物から色や柄の気に入ったものを選び、心を躍らせながら和装をすることになった。全員着せてもらった直後から大はしゃぎで写真を互いに撮り合うなど大喜びの様子。


そして着物姿のままデザインの作品や実習室などを見て回り、学べるコースの多様さを知った。大学ではブライダルのような実務分野を専門的に学ぶ例はあまりないが、専門学校ではゲームやイラスト、動画制作などコースラインナップの豊富さにも関心を寄せていた。

見学後はデザインやビューティの教員との意見交換を行った。アフリカ留学生が自国以外で学ぶとき、なぜ日本を選んだのかの理由として日本の文化に強く引かれたからということは言うまでもない。ケニアの学生は小さいころから日本のアニメが好きで留学先として日本を選んだそうだが,アニメの制作にかかる所要時間を質問したり,もともとスキルを身につけていない入学生をどうやって指導していくのかなど具体的な質問がされた。逆に教員からは,日本に来てから意外だったことは何かという質問に「日本はアニメの国だから国民の全員がアニメ好きだと思っていたが,実際に来てみるとアニメ好きは半分もいなく、むしろあまり多くなかった…」と話した。終了後、全員着物姿で記念撮影をしたが、デザイン学校だから写真の加工として、背景に高松のお城を合成して和装とマッチした写真をプレゼントされた。


当日は台風で外で撮影できなかったため、高松のお城の写真を背景合成

この日の最後は医療系の学校で、歯科衛生と看護分野の設備を見学した。学生が国家資格取得のため技術習得を身に付ける実習設備に直接触れ、教員の手の動きや道具の使い方をモニターに映しながら習得していく設備や実習機器を体験した。看護では新生児人形を抱きながら、地域医療と看護師の役割の説明を受けた。日本は少子化と高齢社会と人口減少の問題が解消されないでおり、厚生労働省の発表では2023年の合計特殊出生率は1.2人だ。しかし留学生らきょうだいの数を聞いてみると、5人、6人、7人と日本に比べると多い。特殊出生率のランキングではアフリカ諸国が上位を独占している。日本が抱える問題とアフリカ諸国が抱える問題は相反していることが多いが、お互いの問題を違った社会環境でとらえていくと、相互的に扶助できることがありそうだ。


このような行程で人口問題と専門教育という2つの側面から、互いの国の関わり方を様々な角度から考察するきっかけを感じながら1日目の視察を終えた。


2日目のインターンシップは観光と地域創生を学ぶ専門職大学からスタートした。訪れたのは高松市屋島地区にある学校法人穴吹学園が運営するせとうち観光専門職短期大学。専門職大学・短期大学とは2017年より発足したより専門分野にいて実践的な学びを身に付ける大学・短大である。当日は学生が観光地屋島のツアーガイドを務めながら留学生たちと交流する計画だったが、台風10号の通過により学生の通学はできなくなった。替わりに学内で外国人向けの四国の自然や風土、お遍路についてのムービーを視聴したあと、教授らとの意見交換がもたれた。

台風の通過が報道されるなか、窓の外を見ると天候は穏やかで雨や風もほぼない状態が訪れた。屋島山上まで行くにはまさに今しかない機会となった。通常は観光客が訪れている展望台も貸し切り状態。眼下には高松市の全景と瀬戸内海、そして遠く岡山県。ニューヨーク・タイムズが選ぶ「行くべき観光地」(2019年、第7位)の絶景を奇跡的にも見ることができた。


その後下山するころには雨や風が激しくなってきた。留学生らは昼食場所としてふもとの住宅地にある精進料理店を訪れた。ベジタリアンやヴィーガン向けにも対応しており、ハラルフードを求めるアフリカ系のイスラム教徒にとっても相性がよい。国内の地方としておいて宗教や嗜好によって適合する飲食店を探すのは難しい場合があるが、野菜を中心とした食材を調理・味付けし、丁寧に盛り付けられた和食はアフリカの人々を大いに喜ばせた。


食事後高松市内の穴吹コンピュータカレッジへ。この学校はシステムやアプリを開発するためのITやネットワークの技術を習得する専門学校である。日本の学生がどのようにして技術を身に付けていくのか、今回は生成AIについて学ぶ体験授業を受講した。彼らは学ぶことに意欲的で、教員の説明をしっかり聞きながら時折質問を積極的にする。この時以外もそうだが、教員が設定した時間を越えるほど質問が繰り返されることもしばしば。専門的な質問もたとえ素朴な質問であっても、遠慮なく発話する。理解や学びを深めるための姿勢は受け身型の日本の学生と比べると大きく違う点でもある。


2日目最後の訪問校は製菓と福祉・保育を学べる穴吹パティシエ福祉カレッジ。外国人留学生も多く在籍する学校である。介護福祉はアジア系の女子留学生が多い。彼女らはなぜ日本の介護技術を学ぶのか。

留学生の中には中国やベトナム出身の学生もいる。彼らは単に日本への出稼ぎ労働者として介護職になるのではなく、20〜30年後は自国においても高齢社会がやってくることを認識して、若い時分に技術や考え方、日本の福祉施設の運営を身に付け、将来の自国での福祉ビジネスを展開する計画も持つ者もいる。アフリカからの留学生も、国によって異なる人口動態とビジネスという観点から、社会に何が必要なのかを知る機会となった。


学校以外で研修も含め10日間のインターンシッププログラムを終え、最終日は学んだことや今後の提案、あるいは将来日本との架け橋となるべくビジネス上の展望を発表する成果発表の機会となった。

現在アフリカは経済的に発展途上、開発途上の段階にある。しかしこの30年間で日本の経済発展に比べればアフリカ諸国の経済成長が目覚ましいことはいうまでもない。ABEイニシアチブというプログラムで実体験した彼らは、やがて自国発展のために大きく貢献するためのアイデアや糧を多く得たに違いない。四国という日本の一地方都市での産業や教育機関のあり方を学んだ彼らが、今後の日本とアフリカ諸国の関係性がより強固にしていくことを願ってやまない。

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